SSブログ

日常のシャーマニズム [エッセイ]



「変性意識」という言葉をご存知だろうか。

かなり乱暴に意訳するなら「ハイ」である。
微妙に意味が違ってしまうが「非日常感覚」と
言ってもイイのだろうか?

とにかく「トリップ」だの「ゾーン」だの
「いっちゃってる。。」だの、である。
普段と違う意識、感覚で世界を捉え直す
そんな状態のこと、なのである。

20代の前半にアジアを1年半放浪して
日本に帰国して暫くしてから
数年ほど離れてしまっていた合気道の道場に
再び通い直そうかと考えていた時
何かの縁で巡り合った先生が、少し
いや、かなり変わった先生だった。

とにかく修練は朝でないと意味がない!
との持論から、毎朝5時くらいからマンションの
一室の道場で学生やら仕事前の社会人相手に
真冬でも窓を全開にして、ホワイトボードを前に
平気で1〜2時間、講義を繰り広げるのである。
それはもう、寒いわ、眠いわ、足が痺れるわ、で
まあ、この環境だけでもチョットした極限状態なのだが。。

その講義内容もかなりディープで多岐にわたっていた。

「解剖学」の視点から人体をとらえ
いかに「内臓力」がその人間のパワーや感性
そして無意識に影響を与えるかを説き
素食と健康の重要性で締めくくり
技の稽古は一切無し。。

あるときは物理学や量子力学とエネルギー論を
さんざん語った挙句、「これらを知らないで
どったんばったん武道をやってるのは、自分の
使う力の根源を知らないまま暴れてるだけだ。
本を読みましょう!知識と経験の層が深ければ深いほど
そこから出て来る言葉やパフォーマンスは多元的になる!」
で、その日の稽古が終わることも度々であった。

武道は強くなる為のものじゃない。
元よりあった元気な状態、健やかな状態を
少しでも取り戻し保つ為のもの。
言うなれば「リハビリテーション」だ!
と、きたもんである。。
護身術やら強さやらを求めて道場に入会した人は
エラいところに来てしまったと思ったに違いない。

ただ先生が説く「自然界のエネルギーは朝がピーク。
後は夜に向けてドンドン落ちて行く。夜の業は迷いに
落ちやすく、朝は悟り安し。」はともかくとして
実際、早朝稽古はかなり気持ちが良いものだった。

真冬の朝に眠い中、起きて
寒い布団の外に飛び出し
道場までの距離を白い息を漏らしながら移動し
何度も帰ろうか?の思いを越え
寒さで鳥肌たつ素肌に道着を着て
部屋の入り口で座り、礼をした時点で
もう既に脳内物質が出てるのが判るのである。
トリップのための「セット」と「セッティング」が
バッチリ整っちゃっているのである。
もう気持ち良くならない訳がない。

そんな先生の講義の中で度々出でくる言葉が
「変性意識」だったのである。

曰く、日常の延長としての感覚やら
固着した考え方、世界への固定概念を
一度外れてみた時に感じるモノこそが
再び戻る日常に、持ち帰る価値のある視点を
与えてくれる。。

確かに世界の各地に残る、イニシエーションの文化
祭りや神事や音楽が内包する「ハレ」と「ケ」のシステム。
アートもその役割を担っているはずだ。

トリップして、出会い、何かを持ち帰る。

本来、社会の中には人々の意識を健やかな状態に
保つ為のリハビリテーションシステムの様なものが
存在したはずなのだ。

現代においてそれは減少している気もする。


でも、意識がそれを求める限り
そこには新たな形をとってでも
人々は「ハイ」を得ようとするハズなのである。

積み上げた思いやら、期待、高揚感が作り出す
爆発寸前の意識エネルギーの蓄積。「セット」

非日常感覚をいざなう環境。
それは出来れば自然のエネルギーが強いフィールドがベスト。
しかし、セットを持つ複数の人間が集まることでも生まれる
エネルギーの場。「セッティング」

そこで、意識の変容を導くキーパーソン。
「現代のシャーマン」は意外とそこかしこに
いたりするもんである。求めていれば。。



それでは、皆さま、、、良い旅を!





コメント(0)  トラックバック(0) 

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。