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さわれない世界から




夜の商店街。


三歳になる息子と嫁の三人で

歩く。


たっぷりと湿気を含んだ空気の中を

ゆっくりと潜航する三隻の潜水艦は

裸電球の灯る店先に

寄港。

メダカや金魚の水槽が並ぶペットショップの店頭に

ふたりを残し自動販売機へと。

久方振りのチェリオとお茶を買い

距離を隔てた街灯のもと

振り返る。



いくつもの鳥籠がぶら下がる

ペットショップの軒先で

ふたりは手を繋いで上を見上げ

なにかを話している口が

ぱくぱく、と。



ここからは何も聞こえないせいか

もう、手の出せない世界からふたりを見ている様な。



小首を傾げる鳥達を指差し

笑う。

抱き上げて鳥籠に顔を近づける。

笑う。






ああ、そうか。

ほんとうにずっと

見守って、願うしか

叶わない。


さわれない世界から

こうして見つめている。

そんな存在。



すべてをかけて

幸せを祈っている。



もう、大丈夫。

そう思える時まで。




気のせいか、ふたりがぼくに気がついて
こちらに歩いてきた。








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